2015年8月14日金曜日

Quad Eight MP404 ラッキング


非常に珍しいQuad EIghtのマイクアンプモジュールMP404を入手できたのでラッキングしました。
昨年からそのうちやろうとは思っていたのですが、なかなか時間が確保できなかったのとパネルの加工に手間取っていたこともありだいぶ先送りになっていました…。
仕事の作業などの合間に私物として作っていたので製作期間は3週間ほどでした。

2015年8月11日火曜日

Neve BA283 AmpCard



リキャップ中のNeve BA283アンプカードです。
オールドのNeveサウンドの要となっているもののひとつで、Neve1073、1066、1272などポピュラーなNeveの心臓部はこのアンプカードが使われていました。

BA283上にはプリアンプとアウトプットアンプの2つが実装されており、これ1枚でディスクリートのアンプが作れるような構成になっているのが特徴です。




全段がNPNトランジスタによるA級シングルアンプ構成で、増幅素子には小信号用トランジスタBC184、アウトプットの最終段にはTO-3パッケージのパワートランジスタ・モトローラ製2N3055が入っています。これにより、負荷の重い大きなトランスも十分にドライブ可能となっています。(放熱のアルミ板ごとかなり熱くなります)出力段がトランスを介して直流を流すようになっているのも特徴で、大型の出力トランスLO1166のためにある出力アンプといってもいいかもしれません。

ゲインはそれぞれ20dbぐらい取ることができるので、これにマイク用トランスを足せばトータルで+60db程度のゲインを稼ぐことができ、マイクプリアンプとして使うことができます。このBA283に入力トランスと出力トランスを付けたのがまさにNeve1272です。Neve1073のイコライザー抜きバージョンとも一見言えそうですが、1073の場合は更に補助用のNeve284というアンプカードも併用して増幅しています。1073のプリアンプを再現するには増幅率などを調整する必要があります。

またBA283もいくつかバリーエーションがあります。

BA283AV : すべての部品を実装したフルバージョン
BA283NV : プリアンプ側のみ実装したバージョン
BA283AM : アウトプットアンプ側のみ実装したバージョン

このアンプカードは前述の通り、大きいトランスをドライブできるだけの力があるので、Marinair LO1166のような大型アウトプットトランスと相性が良く、このふたつが揃うと中低域に厚みのある、正にオールドNeveの音になります。代用品のCarnhilのトランスを使う場合はギャップ対応でプレートが1U対応サイズになったVTB1148を使うとよいでしょう。Marinairとはやや傾向が違うものの、オールドに近い音色を得ることができます。

上:BAE BA283クローン 下:オリジナルBA283

回路図などは既に世間に出回っているので、いわゆるNeveのクローンを作っているメーカーもそっくりそのままこの回路を真似てはいるのですが、なぜか同じような音にならないのが不思議です。音質の要としてはヴィンテージのトランスがよく語られますが、オリジナルのBA283にはまず古いパッケージのトランジスタ、位相補償にポリスチレンコンデンサを使用、2N3055も初期のアルミパッケージを採用しています。このように、今では入手できない素子が多く使われていることも要因のひとつになっている気がします。

BA283は補修用も含めてまだ当方でもストックがありますが、数年後にはトランスと同様もうなかなか手に入らないものになっている可能性が高い気がしています。

・・・

気軽にNeveクローンが作れるようにBA283のクローン基板を作りました。
>> BA283Pと名付けました。単品でも販売しています。

2015年6月13日土曜日

Marinair&St.Ives T1444


オールドNeveのマイク用トランスです。
左が世に有名なMarinair(マリンエア)製、右がSt.Ives(セイントアイヴス)製です。
Neveの資料だとmodel 10468とかT1444と呼ばれているトランスで、2つとも同型のもの。

2015年3月29日日曜日

John Hardy 990

初期型 990オペアンプ

API2520と比べると日本で知名度はさほどないJohn Hardyの990オペアンプです。
しかし世界3大オペアンプに数えられるほどにサウンドは強力です。

2520と同じくディスクリート構成で、ピン配置も同じなので受け側のソケットが同じものならば互換性のあるコンパチ品です。(動作電圧には注意してください。後述)

John Hardyと名を冠していますが、このオペアンプも2520と同じくDeane Jensen氏が設計に関わっており、画像のスケルトンレジンタイプは後期のAPIコンソールにVCAと一緒に実装されていました。

回路の構成はもちろんディスクリートによる差動アンプなのですが、特徴的なのが初段にデュアルのメタルキャンTrを採用しており、その共通ソースにアイソレーション用のアイソレータ(コイル)が入っていることです。この990を設計したあたりからJensen氏は頻繁にこのアイソレーション回路を採用しています。(現行の990cだと出力段にもこのアイソレーション回路が追加されています)

増幅段2段目は初段のコレクタ抵抗の片側からだけ取り出さえており、これはQuadEightの回路と似たような構成になっています。

ドライブ&出力段はメタルキャンTrではなく、モールドパッケージの低周波用TrのSEPPで出力する構成です。このあたりはAPIやQ/Eとも違いますね。

またAPI2520と同じくロットによりバージョンがあり、990、990a、990cと続きます。現行品の990cは幾つかの定数変更があり、定電流回路の抵抗値やダイオードが変更されています。990cは電源電圧を±24Vで駆動させることができるようになっているのでヘッドルームが格段に向上しています。

無印の990(APIコンソールに搭載されていたもの)は電源が±15Vが定格とされており、API系のプリアンプにそのまま使おうと思って±16V以上掛けてしまうと壊れることがりますので要注意です。

音質ですが、ヘッドルームは現行品の990cほうが広く、ハイレンジまでシャキっと粒が見えるような音ですが、初期の990のほうが全体的にスムースな音色で色気があるようにも思います。

このオペアンプにJensenお得意のDCサーボ回路を付属させると、まさにJohn HardyのHAと同じ音になります。