2018年12月2日日曜日

窪田式FETプリアンプについて

以前は電源部のみでしたが、窪田登司氏の発案したアンプを一部紹介します。窪田先生のHPに完成されたバージョンのものが幾つかありますのでひとつ引用させて頂きます。





反転増幅型FETプリアンプ


回路そのものは2000年頃には既に完成しているようで、御本人もHPに掲載しているモデルが完成形と仰っています。途中で初段と二段目のトランジスタをパラレルにする変更などはありましたが、基本形は88年に出版された著書『FETアンプ製作集』に載っているものからほぼ変わっておらず最初から一度も基本理念は変わっていないといえますね。

回路の特徴は初段差動入力部の上下対象回路です。差動入力部にコンプリメンタリのデュアルFET(2SK389+2SJ109)を用い、そのソースを抵抗1本で結ぶことによって互いにバイアスを発生させています。なので定電流回路が不要になるというメリットがあります。そのまま2段目、出力段も正負対象のまま増幅されるのでDC動作的にも非常に合理的な回路です。

一部では完全バランス回路という呼称も使われています。古くはJohn Curl設計のMark Levinsonの最初期ラインドライバーも同じような回路を採用していますし、SansuiのXバランス回路の電圧増幅部も同じ回路構成です。

音は非常に音楽的といいますか、適度に柔らかさがある高解像度アンプといった感じです。同じFET入力アンプである初期のMark Levinsonと比べるとレビンソンのほうがシャープに感じます。窪田アンプはFET固有の立ち上がりの速さはありつつ、音の密度や空気感を重視しているように思います。質感でいえば少しウェットな音色です。最近のハイエンド系はクリアネスを追求しすぎるあまりに空間表現やサスティーンを削ぎ落とすようなものが多いですがそれらと真逆の表現力ではないでしょうか。

ちなみにアイデアは素晴らしいのですが、今作るとなると非常に困難なアンプです。それは言うでもなく初段の高gmデュアルFET(2SK389/2SJ109)のペアーが入手困難パーツになってしまったことです。

デュアルでないシングルのJ-FETを選別しようにも、高gmのJ-FETとなるとNchはともかくPchのFETはそう纏まった数は確保できません。そこからペアーになりそうなものをピックアップするのは骨が折れます。東芝のチップデュアルFETも製造されているのはNchのみでコンプリメンタリはありませんので流用もできないのです。

そういう意味でもノスタルジックなアンプになりつつありますが、個人製作などのアンプがオークションに出ることもありますので、動作品なら狙ってみる価値はありそうですね。

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