Quad Eight AM-10はQuad Eight社のコンソールなどに標準搭載されたディスクリートオペアンプです。
日本ではQuad Eightの知名度はいまいち低いという印象ですが、本国アメリカでは非常に高い評価を得ていたコンソールであり、NeveやAPIと並んで今でもその音に魅了され続けているエンジニアやミュージシャンも多いです。(晩年は三菱に買収され別物になってしまいました)
QuadEight回路の特徴はAPI以降の定番になっていたディスクリートオペアンプ(DOA)を軸に更にレンジやパンチ力を加えたアナログ時代でも最高クラスのものでした。いくつかあるDOAのうちのひとつでありその完成形がこのAM-10です。
見ての通り、いわゆる2520ピン配置の互換性はなく、GNDピンのない5ピン仕様で、オペアンプそのものはAPIのように基板は樹脂でモールドされていません。なのでオペアンプ内の半導体が壊れた際には交換することも可能です。海外では初段の半導体をデュアルTrに交換したり、思い切ってFETに交換したりする改造を行っている人もいるようです。
APIと同じく設計にJensen氏が関わっているので回路のデザインはJE990などと似通う部分もあるのですが、最大の特徴がハイボルテージドライブで、+-28V動作が標準となっているところです。
高い電圧で動作させるということはそのままヘッドルームが広くなり、音もクリアーになります。ラインで高レベルな入力をしてもアンプ部分では一切音が歪んだり潰れたりするようなことはないということです。単電源+24V動作のNeveはまだしも、API2520でも+-20Vが限度ですからそれ以上のヘッドルームがあるということですね。アナログ入力段で音がクリップすることがまずありえません。
+-28V動作を採用しているのはQuadEight以外だとGML(Sontec)です。GMLもマスタリングで耐えうるヘッドルームの広いアンプが必要ということで、+-28Vのオリジナルオペアンプを採用しています。
Quad EightのコンソールではJensen製のカスタムトランス(通称QE印)が標準装備されており、それも相俟ってリニアリティの高い音になっています。このヘッドルームの広さが音色に直結しているような印象で、レンジが広くスピード感がありながら、耳には痛くなく太さも兼ね備えているような…まさにアメリカのオーディオという印象の音です。
もちろんAM-10はQEでなくともマイクプリアンプやフォノイコライザーに転用すると素晴らしい音質のアンプになりますよ。体感してみたいという方は是非ご連絡を!