2018年9月14日金曜日

Neveのアウトプットトランス その2

前回のエントリから少々時間が空きました。前回のエントリを投稿したあたりからとある物の検証や試聴に時間をかけていたためです。



そのとあるモノとはこちら…。
Humpback EngineeringがプロデュースするLO1166互換トランス、HT1166です!




だいぶ前にHumpback Engineeringの戸田さんから「オールドNeveのトランスのコピーを作った」と連絡を受けたときは、実のところそれほど期待していませんでした。

というのもオールドのMarinairやSt.Ivesの仕様をコピーしたトランスは今でも多くありますが(Carnhil、AMS Neve、AuroaAudio、Sowter、etc)肝心の音色がまったくの別物なのです。良し悪しというよりは例外なくモダンになってしまう…根本的なマテリアル(コアの金属・巻線)の差によることが原因を考えてきました。現代で最高のトランスを作れたとしても、古い鉄で新しいトランスを作ることは不可能なのです。

HT1166は国内でも様々なオーディオ・トランスを分析・製造してきたトランス屋さんにオリジナルのLO1166を徹底分析してもらい、巻線比、DCレジスタンス、DCギャップから音響特性まで限りなく近づけてハンドメイドで作ったそうです。

まず戸田氏がトランスでサミングしたという2mixのサウンドサンプルが送られてきました。もうこの時点で良い音だったのですがオールドのトランスを比べるとまだ現代風の音でした。良い音がゆえに惜しい。しかしまだチューニングの余地があるのならば徹底的にやってみたが良いと考え、さらなる検証用も兼ねてHumpback Engineeringへ私物のLO1166を1ペアー貸与しました。

そして数日後に再びサウンドサンプルが送られてきました。もちろんオリジナルのLO1166で比較もできる状態で、です。聴いてみると前より明らかに良くなっている(近づいている)のです。戸田氏によるとオリジナルLO1166のサウンド聴きながらターミナルに使う半田や単線材を変更することで音色を近づけていく…というチューニングを行ったとのこと。

その後貸し出したLO1166と一緒にHT1166を預かり、当方のスタジオでも半月ほど色々な接続方法やセッティングで試聴。同時にVTB1148などの現行のトランスとも比較しました。その結果、少なくとも現在入手可能なトランスの中でオリジナルLO1166に一番近いのがHT1166だと感じました。

サウンドそのもので言えばほぼ文句がありませんし、特性も非常に近いです。オールドのBA283と組み合わせたときのパターンはかなり近くて、ジューシーな分厚さとやや癖のあるハイがしっかり再現されます。

・・・

良い部分ばかり書くとアレなのでマイナス面も。まずコストですね。本物が買えるくらい高いところ。しかし日本国内で専門のトランス屋さんがハンドメイドしているものですから、これは致し方ありません。Humpback Eng.ではある程度まとめた発注数を確保することで価格を下げる努力は今後していくとのことですので、欲しいと思った方はどんどん買っていったほうがいいと思います。そのうち手が届きやすくはなるかも…。

あと、形状がオリジナル準拠ではないので、特殊な縦長のサイズ。もちろん互換性はなく、1Uサイズではマウントできないのですが、2Uサイズのケースでも横向きにマウントしないとケースに収まりません。これも少々惜しい部分。しかしこれも外観だけではなく性能に注力したためですので仕方がありませんね。個人的にはこの音で形状も同じにできれば文句がないくらいなので。


【実験中に分かったこと】
以前から思っていましたがパッシブ接続(電子バランスの機材にトランスをつなぐだけ)だとそもそもトランスを通過したサウンドの変化ってかなり小さいと思います。これはリスニングの時点で「ちょっと中低域が増えたかな?」程度です。効果がない訳はないのですが…。(このトランスは通過すると昇圧比の関係で音量が+4db増えますので、比較するときは送りのレベルを調整する必要があります)

やはり真価を発揮するにはドライブ用のアンプカードが要ります。オールドNeveのユニットの音色を再現するには、トランスに加えてクラスAラインドライバーを組み合わせることです。そうすることで低域〜中域の厚み、高域のサラっとした倍音感が付随されます。Neve BA283の回路を完全に再現したBA283Pを利用することでそれは実現しやすくなります。


ともかく、オールドに限りなく近いトランスが新品で手に入るというアドバンテージは非常に大きいと思います。やがてコストの問題さえ解消されれば、最高の選択肢のひとつになるでしょう。

当方の直販プライスですが、
1個  ¥6,0000 + tax
ペアー  ¥115,000 + tax
とさせていただきます。
もちろんBA283Pと組み合わせることでサミング・アンプも作れますのでご希望の方は適時問い合わせてください。



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