2018年7月28日土曜日

Neveのアウトプットトランス その1

オールドのNeveといえばアンプカードとトランスがサウンドのキモですが、今回はアウトプットトランスについてです。中でも最も有名なひとつがこのMarinair LO1166です。コンソールの中核部分、また1073や1066のようなモジュールの最終段に使われているものです。

Marinair LO1166 Matched Pair


近年は神格化されすぎたせいか海外でも高騰&入手困難で、今となってはこういった綺麗なペアーを確保することは難しくなってきています。(売り物のストックはもうとっくの昔にありません)




一般的なライントランスと根本的に違うのは1次側に直流を流す前提で作られていることです。意味がよく分からないという人は、アンプカードであるBA283AVの回路図を参照してください。終段のパワートランジスタ2N3055のコレクタ側から信号は取り出されていますが、このコレクタにはアンプカード単体では+電源が供給されていません。なのでトランスの1次側を介してコレクタ側に+電源を供給しつつ信号も取り出すようになっています。イメージ的には真空管アンプのシングルエンド出力と同じです。つまり、初期のNeveのシングルアンプというのは真空管回路を半導体に差し替えたようなものだと思ってください。

VTB1148よりプレートが大きい


話を戻すと、このLO1166というのは前述のBA283でドライブするためにあるトランスなので、1次側を強力にドライブするA級アンプカードと組み合わせないと真価は発揮できません。よくサミング用にトランスだけをパッシブでケースに収めた『トランスBOX』的なものを製作されているのも散見しますが、電子バランスの機器から引っ張った信号をトランスにつなぐだけではNeve独特のドライブ感は得られないのです。サミングしたい場合はパッシブ接続ではなく、必ずNeveのアンプカードとセットで使いましょう。(オリジナルBA283が入手できない場合は当方のBA283Pを推奨します)




同じMarinairでも形と巻線比が同じLO2567というトランスがありますが、こちらはLO1166のギャップなしバージョンです。シングル出力用ではないので直流を流してはいけません。出力がプッシュプルのアンプカードBA208などと対応するものですね。後期型のBA440などもプッシュプル出力なので組み合わせることができます。その組み合わせだと1073系ではなく1081系の音になります。

※ギャップというのはトランス内部のコアと巻線の隙間です。トランスに直流を流すとコアが徐々に磁化していき、音響特性が変わってしまいます。それを防ぐ為にあらかじめギャップで対策をしているのがギャップ付きトランスです。真空管用のトランスがシングルエンド用とプッシュプル用に分かれているのは、シングルだと構造的に直流が流れてしまう為で、シングル用の出力トランスはすべてギャップ付きです。プッシュプル用はギャップ無しのトランスです。

あともうひとつ忘れてはならないのは2次側につける抵抗とコンデンサです。(1.5k+0.01uf)これはトランス特有のリンギングやピークを抑えるためのものですが、ここに使うコンデンサの種類で音質がかなり変わります。良質なフィルムコンデンサを使いましょう。

互換品だとクローンメーカー御用達CarnhilのVTB1148があります。これは巻線比が同じ・ギャップ付きの出力トランスですが、プレートの幅が小さくなっています。オリジナルのLO1166はこの幅が大きく横向きにしても1Uサイズのケースには収まらないのですが、VTB1148は幅を35mm程度まで小さくすることで1Uケースにも収まるサイズになっています。一応オリジナルLO1166とプレートが同サイズのVTB9049もありますが、コアやターン数などは同じものですので採用されることはあまりありません。

しかし形状だけ似せたリイシュー製品ではなくオリジナルのトランスの音色が欲しいというのがNeveマニアの本心。しかしオリジナルユニットどころかトランス単体の入手は現実的ではなくなっています。そんな時代にひとつの朗報が…??

その2へつづく?

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