2018年4月17日火曜日

低雑音・高利得J-FETの枯渇



2018年現在、オーディオ向け半導体は益々入手が困難になっていますが、中でもアンプ初段の増幅回路などに使える低雑音・高利得のディスクリートJ-FETは枯渇が急速に進んでいます。特に古典的なリードタイプの部品は次々にディスコンになり、汎用チップ部品へのシフトが目立つため自作派の人で困っている人は多いと推測できます。

元々リードタイプ(TO-92)のJ-FETは東芝製の2SK30、2SK170が製造中止ながらも2014年中頃までは部品屋で安価で大量に入手することが可能でした。が、秋月電子など大手のショップで取り扱いが終了した後は価格も倍以上へ高騰、入手性も不安定になっています。既にまとまった数を確保するのが困難となり、最近では隣国からセカンドソースという謳い文句で偽物も出回っているくらいで、入手難の様相が伺えます。(偽物は同等の性能が出ません)

オーディオ用の回路で用いているFETの現状は、以下のような状態です。
全て東芝製です。Nチャネル型のみ。

・2SK30ATM (GR)
低雑音。バッファーや、作動入力、定電流回路用。
以前は定番の安FETだったが、2018年現在は入手がやや困難。
高利得の初段には不向きだが、入力容量が小さく高域特性が良好。
サウンドはツルッとしたストレートで締まった音。

・2SK117(GR, BL)
低雑音・高利得で特性は2SK170に近い。
金田式DCアンプの初段差動回路で定番のFET。
入手は既に困難でペアーが必要な場合は後述の2SK209、2SK2145が代用品に挙げられる。

・2SK170 (GR, BL)
低雑音・高利得の定番品。
バッファーや作動入力に適し、高利得なのでマイクプリアンプやMCアンプにも使える。
2018年現在は入手が困難。
コンプリメンタリの2SJ74は今では更に希少。
サウンドはしなやかさがある豊かな音。

・2SK369 (BL, V)
低雑音・高利得。
2SK170と同じく高利得なのでマイクプリアンプやMCアンプに適している。
入力容量が高く発振しやすい。また特性のバラツキも大きい。
2018年現在は秋月電子通商で購入可能。(購入数制限あり)販売終了したようです。
サウンドは華やかさもありややにじみ感もある音。


現行品として表面実装用のチップ型パッケージとして入手なものは以下になります。

・2SK208(Y,GR)
中身が2SK30相当のチップFET。
バッファや定電流素子として。

・2SK209 (GR,BL)
低雑音・高利得。
Yfsが高く2SK30や170の代替になりそうなチップFET。
中身は2SK117の同等品とのこと。
定電流素子として使いやすい。

・2SK2145 (GR, BL)
低雑音・高利得。SOT-23デュアルパッケージ
2SK209をデュアルにしたFET。
5本足のパッケージでソースは共通端子となっている。
2本の特性が揃っているため作動入力の初段に最適。

・2SK3320 (GR,BL)
デュアルパッケージ。
2SK2145とほぼ同じ性能を持つデュアルFET。


 上記以外にも海外製なども探せば他の選択もありそうですが、同じ東芝でピックアップしてみました。低雑音&高利得のシングル、デュアルが両方とも入手できるのが救いでしょうか。特に2SK2145(2SK3320)は貴重なデュアルパッケージで、元祖デュアルFETの2SK389が入手困難になった現在では貴重な選択肢です。

幾つか計測してみると特性のズレも少ないですが、ソースが共通端子になっているため、差動回路のオフセット調整はドレイン側で行う必要があります。個人的にチップ半導体の音質には懐疑的だったのですが、2SK2145に関してはややシャープな癖があるものの、おおむね良好でした。

ただし全て表面実装用のSOTパッケージですので、専用のPCBを作るのは必須になっていきます。2.54mmピッチへの変換ソケットは販売されていますが、いちいち使うのも手間ですので、一度試作した後は自分の使う回路でPCBを設計してしまったほうがいいと思います。

マスタリング用アウトボード(Avalon、GMLなど)や、ハイエンドオーディオ(Violaなど)もアンプの出力段以外は全部表面実装、ということも最近は普通になってきているようですので、リード部品からチップ部品へのシフトというのは覚悟しながら物づくりをしていかざるを得ないのかもしれません。

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