2021年9月15日水曜日

ドライバー段トランジスタ考察



アンプのドライバー段用トランジスタというと、一般的には中電力トランジスタと呼ばれることが多いと思います。小信号用よりも電力を流せるTO-220のパッケージに収まっているものが多いです。プリアンプでは出力段にも使われます。一般的にパワートランジスタと呼ばれる大電力トランジスタと小信号トランジスタの中間にあたるものです。



日本では従来ローコスト用で大量に出回っていたものとして東芝の2SC3421/2SA1358があり、00年代頃まで様々なオーディオ製品に使われました。また電子部品屋で非常に安く購入できたこともあり、個人のDIY勢でもまずこのコンプリメンタリー・ペアが採用されることが非常に多かったと記憶しています。しかしながら長年安価ドライバーTrを支えた2SC3421も数年前にディスコンになりました。


当たり前に使われすぎて、その音質やキャラクターというものには全くの無頓着でしたが、事実上の後続製品として同じ東芝からTTC004B/TTA004Bが流通するようになったのをきっかけに、私の製作物もそちらを採用するようになり、ディスクリートオペアンプや電源レギュレータなどに順次差し替えられました。


その後改めてC3421を使った旧タイプのオペアンプや電源と最近の製作物を比較してみると、明らかに最近作ったもののほうが音質が良かったのです。


具体的に言うと、TTC004B/TTA004Bを採用するようになってから全体的に明瞭になり、中域の曇りと濁りのような帯域が大きく改善されたのです。これは音声系に使われたときも、電源系で使ったときもほぼ同じ傾向でした。逆に言えば、C3421/A1358を採用した場合はやや音が曇って、縮こまったような印象を受けました。


シリコン半導体の製造過程でどういった音質変化があるかは私も専門家でないのでハッキリコメントできませんが、TT系のシリーズになってからのほうがCob(入力容量)も小さく、バイアス特性が安定しているのかなと思いました。あとTT系のほうは選別していない状態でhfeが高い個体が多い気がします。(C3421はYランクでもhfeが200以上のものって殆どなかった気がするんですが)


デバイスとしての動作がほぼ同じでも、ひとつの素子は音質面でひとつひとつ吟味しなくては、最終的な音質にどれほど関わってくるか逆算できない…という事例でした。

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