2018年12月2日日曜日

窪田式FETプリアンプについて

以前は電源部のみでしたが、窪田登司氏の発案したアンプを一部紹介します。窪田先生のHPに完成されたバージョンのものが幾つかありますのでひとつ引用させて頂きます。


2018年11月29日木曜日

DC Filter Module for JC2 (ML1)

Mark Levinson DRF-2


Mark Levinson JC-2(ML-1)には内蔵モジュールのひとつにDCフィルターモジュールがあります。

これは外部電源からJC-2本体に供給されているDC+-15Vをフォノ専用の+-13Vにドロップして出力するフィルター・モジュールです。DCを本体側で更にレギュレートすることでDC電源の残留ノイズを更に減らす狙いがあるものだと思います。


2018年11月27日火曜日

LEDレギュレータについて

電源のDCレギュレータというと様々な方式があります。三端子レギュレータのように一本のICで可変電源を作れるような便利なものがあります。

もちろんハイクオリティーを目指すならばフルディスクリートでやるべきです。最近は定電圧素子にLEDを採用したものをメインで採用するようになりました。いわゆるLED電源と呼ばれているようなものです。

2018年11月24日土曜日

JC-2のモジュールについて

Mark Levinson JC-2について前回のエントリの続きです。
どちらかというと解析編になりますので、技術的な話になります。

改めて各モジュールについてです。構成は、

・ラインドライバーモジュール *2
・フォノアンプモジュール *2
・DCフィルターモジュール*1

です。
モジュールの外見や型番は時期によって多少違いますが私が分かる範囲で個別に解説します。


2018年11月18日日曜日

Mark Levinson JC-2について


Mark Levinsonというブランドはオーディオ界で既にご周知の通りですが、中でも最初期の製品にあたるJC-2というプリアンプはヴィンテージ・プリアンプとしていまだに根強い人気を持っています。

最初期この名機をデザインしたのがジョン・カールというデザイナーです。(JC-2のJCはJohn Curlに由来します)ジョン・カールがマークレビンソン時代に携わったアンプはJC-1(MCヘッドアンプ)、JC-2(プリアンプ)、LNP-2(プリアンプ)とごく僅かなモデルに留まりましたが、そのサウンドは高く評価されています。(会社としてはその後デザイナーを変え、様々なアンプを発表。紆余曲折を経て存続していきます)

JC-2(ML-1)は既に回路図も公開されていますので、その全貌は明らかになっています。

中身は非常にシンプルな回路です。特にフォノ入力以外はそのままクラスAの出力アンプ(ラインドライバー)を一度通るだけという潔さ!プリアンプ史上最もシンプルに徹したプリアンプとも言えると思います。


JC-2内部

そして特徴的なのが各アンプセクションはモジュール化されており、取替可能になっていいることです。これは故障時の対応や後のアップデートに対応するためと思われます。モジュールはフォノ用のEQアンプモジュールラインドライバーがLRで各2基ずつ、アンプではないですがフォノ用の電源レギュレータのモジュールが1基搭載されています。もちろんすべてディスクリートです。

またアンプモジュールはすべてJ-FET入力になっています。JC-2の発表は1974年頃。FET入力の本格的な差動アンプを採用されたのは初めてではないでしょうか。(プロオーディオでも有名なAPIやQEのアンプは全てバイポーラ入力です)ジョン・カールも早い段階でFETの優れた雑音特性に目をつけていたのだと思います。

しかしこのアンプモジュール、モールドされているクラスAアンプの宿命もあるのか経年によっていずれ壊れます。40年以上前の製品ですからね。もちろん壊れてしまうと修理をしなくてはいけない訳ですが、モジュール本体は新品ではもう手に入りません。そうなるとオリジナルのモジュールを分解して修理するか、新しく互換性のある代用モジュールを手に入れる必要性があります。

前者(モジュールの修復)に関しては国内外のショップで行うことができるようですが非常にコストが高く、分解しても直らないリスクもあるのでよほどオリジナルのモジュールにこだわりがない限りはオーナーの選択肢には入ってきません。となると互換モジュールを購入するのが有力な選択肢になってくる訳ですが、これもまたオリジナルの音とは異なるうえにモジュール自体もそこそこ良い値段になってしまいます。

ちなみに、オリジナルのラインドライバーやアンプモジュールを模した偽物モジュール(中身はICオペアンプ)も大量に出回っていますので、レビンソンのシールが貼られているからといって海外から入手するのはなかなか危険です。


そういった状況を踏まえて「いっそのこと、うちで交換用モジュールを製作できないだろうか…」と思ったのが数ヶ月前。ちょうどうちではFDOA-01というJ-FETのディスクリートオペアンプを開発したところでしたし、これならばオリジナルに近いサウンドを現代の高品位な部品で再現できるのではと思いました。

ひとまずはメインアンプ部分となるラインドライバーの開発です。
数ヶ月の間に数パターンの試作が出来上がり…。

(つづく)

2018年9月14日金曜日

Neveのアウトプットトランス その2

前回のエントリから少々時間が空きました。前回のエントリを投稿したあたりからとある物の検証や試聴に時間をかけていたためです。



そのとあるモノとはこちら…。
Humpback EngineeringがプロデュースするLO1166互換トランス、HT1166です!


2018年7月28日土曜日

Neveのアウトプットトランス その1

オールドのNeveといえばアンプカードとトランスがサウンドのキモですが、今回はアウトプットトランスについてです。中でも最も有名なひとつがこのMarinair LO1166です。コンソールの中核部分、また1073や1066のようなモジュールの最終段に使われているものです。

Marinair LO1166 Matched Pair


近年は神格化されすぎたせいか海外でも高騰&入手困難で、今となってはこういった綺麗なペアーを確保することは難しくなってきています。(売り物のストックはもうとっくの昔にありません)


2018年7月14日土曜日

窪田式FET電源

FETアンプで著名な窪田登司先生が80年代に発表していた定電圧回路です。この手の回路は通常電力増幅用Trをダーリントン接続+誤差増幅器で構成されますが、入力インピーダンスが高いという点に着目してMOSFETが採用されています。いわゆる高速レギュレータの一種です。簡易的に、窪田式FET電源と呼ぶことにします。基本回路図は以下の通りです。

窪田式FET電源

Q14のベース電位を決めるのにツェナーダイオードが使われています。並列で繋がれている電解コンデンサはツェナーダイオードから発生するノイズを吸収するためということですが、この定電圧素子をLEDでやってみたら面白いのではないかと思いました。LEDならば素子から出るノイズは圧倒的に少ないですしこのコンデンサも省略することができます。ベース電位を約6Vほどにしたいので、Vfが約2Vの赤色LEDを3本、もしくは2.8Vの青色LEDを2本といった具合でしょうか。これを応用してプリアンプ用の電源を作ってみたいと思います。

2SK214/2SJ77は流石に古すぎて入手難ですのでMOSFETは手持ちにストックがある2SK2013/2SJ303を使ってみることにします。PCBは既に発注をかけているので到着待ちです。

窪田式FETアンプに関してはまた別のエントリにて。

2018年6月28日木曜日

Neve BA208 AmpCard

BA208

ストックパーツの類を整理していたら、Neve BA208が沢山出てきました。

これもオールドNeveのアンプカードの一種で、コンソール内のスイッチングユニットNeve1948のバッファー的に使われていたアンプです。比較的用途が近いのはBA283AMでしょうか。しかし、BA283とは回路が少し異なります。回路図を見てみましょう。


2018年6月15日金曜日

オリジナルのディスクリートオペアンプ

FDOA-01


Floatiaオリジナルのディスクリートオペアンプ、FDOA-01FDOA-02を発表します。
共にAPI2520と互換性のあるディスクリートオペアンプ(DOA)になります。

オリジナルのDOAのアイデアは2年近く前からありましたが、少なくともオリジナルの2520や、既存のDOAに対して何らかのアドバンテージがあるものでなければならないという考えがあり、十分なクオリティーのものになるまでは時間が掛かりました。それがやっと形になったのでこの度発表となりました。

まずFDOA-01ですが、こちらはJ-FET入力タイプのDOAになります。ローノイズかつFET特有の切れのあるクリアーで繊細なサウンドが特徴です。音の立ち上がりの早さ、明瞭さは他のDOAよりも格段に優れています。

FETは入力インピーダンスが高くセンシティブな信号の増幅に向いていますが、十分な増幅率を確保することや、また半導体の特性選別が難しいという問題がありました。FDOA-01では初段の差動増幅回路に低雑音・高増幅率のデュアルマッチド・FETを採用することでこれを解決。個体差がなくフォノイコライザー・マイクプリアンプにも十分足りる内部ゲインを持っています。

FDOA-02


FDOA-02は01と基本はほぼ同じ回路ですが、こちらはバイポーラTr入力です。初段はデュアルのバイポーラTrを採用しています。全体的に落ち着きがあり、中低域が充実した音色になっています。バイポーラ入力ですので、既存のAPI2520搭載機材との相性もよく、特性的な互換もあります。




またどちらも定電流回路とバイアス回路にLEDを採用しています。一般的にこれらの回路にはツェナーダイオードやスイッチングダイオードなどの汎用シリコンダイオードが用いられるのが普通ですが、微弱電流においてはダイオード自身がノイズの発生源になっていました。LEDはそれらに比べて無視できるほどにノイズが小さいというメリットがあります。LEDなので通電時には当然発光しますが、電力を無駄遣いしている訳ではないです笑

この2つは単品で支給もしますが、(※)これらを使って新型のマイクプリアンプとフォノイコライザーも製作いたします。既に試作は何度かしており、とても高評価を得ています。またプロオーディオだけではなく民生用のアンプにも転用できますので色々な応用を考えています。

今後はこういったディスクリートのモジュール製作が中心になっていくと思います。続報をお待ち下さい。

※各ページに記しました通り通常はペアーで¥12,000で販売します。

2018年5月28日月曜日

基板頒布の一覧



頒布中のDIY向け基板一覧です。原則PCBのみになります。
DOAやキットの購入はwebshopで。
(回路図とマニュアルはすべての基板に付属します)

基板のみの場合は定形外郵便で発送しています。
厚みのある部品や総重量が多い場合は場合はレターパックになります。

【注意】
PCBは飽くまでも販売ではなく頒布という形式をとっています。個人での使用を目的としたものであり、商用利用は想定しておりません。また、各基板の仕様についての質問は受けますが、製作・実装の初歩的なテクニカル・サポートはしかねますので、基本的な工作技術があり、測定器・テスターなどを用いて自身で動作確認ができる方のみ購入してください。

2018年4月17日火曜日

低雑音・高利得J-FETの枯渇



2018年現在、オーディオ向け半導体は益々入手が困難になっていますが、中でもアンプ初段の増幅回路などに使える低雑音・高利得のディスクリートJ-FETは枯渇が急速に進んでいます。特に古典的なリードタイプの部品は次々にディスコンになり、汎用チップ部品へのシフトが目立つため自作派の人で困っている人は多いと推測できます。

元々リードタイプ(TO-92)のJ-FETは東芝製の2SK30、2SK170が製造中止ながらも2014年中頃までは部品屋で安価で大量に入手することが可能でした。が、秋月電子など大手のショップで取り扱いが終了した後は価格も倍以上へ高騰、入手性も不安定になっています。既にまとまった数を確保するのが困難となり、最近では隣国からセカンドソースという謳い文句で偽物も出回っているくらいで、入手難の様相が伺えます。(偽物は同等の性能が出ません)

オーディオ用の回路で用いているFETの現状は、以下のような状態です。
全て東芝製です。Nチャネル型のみ。

・2SK30ATM (GR)
低雑音。バッファーや、作動入力、定電流回路用。
以前は定番の安FETだったが、2018年現在は入手がやや困難。
高利得の初段には不向きだが、入力容量が小さく高域特性が良好。
サウンドはツルッとしたストレートで締まった音。

・2SK117(GR, BL)
低雑音・高利得で特性は2SK170に近い。
金田式DCアンプの初段差動回路で定番のFET。
入手は既に困難でペアーが必要な場合は後述の2SK209、2SK2145が代用品に挙げられる。

・2SK170 (GR, BL)
低雑音・高利得の定番品。
バッファーや作動入力に適し、高利得なのでマイクプリアンプやMCアンプにも使える。
2018年現在は入手が困難。
コンプリメンタリの2SJ74は今では更に希少。
サウンドはしなやかさがある豊かな音。

・2SK369 (BL, V)
低雑音・高利得。
2SK170と同じく高利得なのでマイクプリアンプやMCアンプに適している。
入力容量が高く発振しやすい。また特性のバラツキも大きい。
2018年現在は秋月電子通商で購入可能。(購入数制限あり)販売終了したようです。
サウンドは華やかさもありややにじみ感もある音。


現行品として表面実装用のチップ型パッケージとして入手なものは以下になります。

・2SK208(Y,GR)
中身が2SK30相当のチップFET。
バッファや定電流素子として。

・2SK209 (GR,BL)
低雑音・高利得。
Yfsが高く2SK30や170の代替になりそうなチップFET。
中身は2SK117の同等品とのこと。
定電流素子として使いやすい。

・2SK2145 (GR, BL)
低雑音・高利得。SOT-23デュアルパッケージ
2SK209をデュアルにしたFET。
5本足のパッケージでソースは共通端子となっている。
2本の特性が揃っているため作動入力の初段に最適。

・2SK3320 (GR,BL)
デュアルパッケージ。
2SK2145とほぼ同じ性能を持つデュアルFET。


 上記以外にも海外製なども探せば他の選択もありそうですが、同じ東芝でピックアップしてみました。低雑音&高利得のシングル、デュアルが両方とも入手できるのが救いでしょうか。特に2SK2145(2SK3320)は貴重なデュアルパッケージで、元祖デュアルFETの2SK389が入手困難になった現在では貴重な選択肢です。

幾つか計測してみると特性のズレも少ないですが、ソースが共通端子になっているため、差動回路のオフセット調整はドレイン側で行う必要があります。個人的にチップ半導体の音質には懐疑的だったのですが、2SK2145に関してはややシャープな癖があるものの、おおむね良好でした。

ただし全て表面実装用のSOTパッケージですので、専用のPCBを作るのは必須になっていきます。2.54mmピッチへの変換ソケットは販売されていますが、いちいち使うのも手間ですので、一度試作した後は自分の使う回路でPCBを設計してしまったほうがいいと思います。

マスタリング用アウトボード(Avalon、GMLなど)や、ハイエンドオーディオ(Violaなど)もアンプの出力段以外は全部表面実装、ということも最近は普通になってきているようですので、リード部品からチップ部品へのシフトというのは覚悟しながら物づくりをしていかざるを得ないのかもしれません。

2018年2月10日土曜日

Neve1272を改良する(ラインレベルも受けられる!)

Neve1272

一般的にNeve1073,1066等の代用HAとして使われることが多いNeve1272ですが、実は大きな問題点があります。実際に使ったことがある方は実感したことがあると思いますが、かなり入力が歪みやすいのです。特にマイク録音に関してはソースがピーキーになりやすいですし、マイク本体が真空管マイクなどになると大元の出力が大きめになりますので、余計に歪みやすくなります。しかも、オリジナルのラッキングものにはPADスイッチが付いていないことも多い…と実際エンジニアさんもお悩みの方が多いはず。今回は、そういった一連のウィークポイントを解決する改造を紹介したいと思います。




そもそも入力が歪みやすい原因を探ると 、1272の構造に問題がありました。元々ラインアンプではあるのですが、入力トランス(10648)を通過したあとにそのままアンプであるBA283へ入力されるようになっています。BA283はご存知の通りシングルアンプで入力初段のエミッタ抵抗値でゲインを調整するようになっているうえ、更に既にトランスの昇圧で+6dbの利得がその前にあります。なのでこの時点で信号が大きくなりすぎます。Neveの動作電圧は+24Vですから元々ヘッドルームも狭いことも相まって、クリップし易かったのです。

つまりこれを改善するにはアンプの初段の手前で信号をある程度トリムする必要性があります。ここで入力を調整しつつ後ろのアンプである程度信号をゲインアップできれば、Neveの音色を活かした音作りも可能になりますね。そこでこのように配線をし直しましょう。

Neve 1272 改造図

追加で必要な部品は5kAカーブのボリュームと240Ω、22Ωの抵抗、あとはトグルスイッチです。
(プッシュプルスイッチ付きボリュームでも可)
入力トランスの負荷抵抗は不要なので外してしまいましょう。

見ての通り、入力トランスの直後に5kAのボリュームで信号をトリムするようになっています。ここで信号を可変で絞ることにより、かなり大きな信号でも歪みづらくなり融通が効くようになります。またフロントアンプのゲイン調整用抵抗(240Ω)は固定にしていますが、ここをトグルスイッチで22Ωに切り替えることにより、ゲインが+18dbとなりますのでトータルゲインは今まで通りトランスの昇圧分を含めて60db近く稼ぐことができます。(リアアンプのゲインを調整する端子“K”はオープンでゲイン固定しています)入力インピーダンスは1.2kΩとなります。

増幅前の信号をボリュームに通して音質的にいいの?と思う人もいると思いますが、ひとまずお試しください。違和感はほぼないですし、しかもゲインがスムーズに可変できるようになった使いやすさのほうに感動すると思います。特に1つの入力でマイク/ラインレベル両方をこのまま受けることができますから、サミング・アンプとして使う場合は非常に便利です。オススメです。

いわゆる1272タイプのクローンはオリジナルの回路を踏襲しているため、このヘッドルームの狭さ・歪みやすさも継承してしまっているのですが、新しくNeveタイプのプリアンプを製作する場合はこちらの回路で作ったほうが良い結果が得られると思います。PADも不要ですしね。

2018年2月5日月曜日

チューブラ型のコンデンサ

BA283のリキャップ作業をしていました。最近よく使いかますからね。古いコンデンサーは全て新品に交換します。

日本では電解コンデンサは殆どが縦向きに実装するラジアル型と呼ばれるものですが、海外の製品だと横向きに実装するチューブラ型(Axial型)が使われていることが多いので、元々チューブラが付いていた場所には同じチューブラのコンデンサを再度付け直します。

ニチコン・チューブラ型VX

慣れていないと間違えやすいのがコンデンサの極性で、矢印(>>>)が向いている先がマイナス側です。ラジアル型と違って+の記号がついていないものが殆どですので、間違えて逆に付けて爆発させたりしないようにしましょう。

国産コンデンサだとチューブラの選択肢が殆どないので、オリジナルに準じてフィリップス製のチューブラをいままで使っていたのですが、最近Vishayブランドになって見た目が変わったようです。ちょっとまだ違和感があります。