2017年3月30日木曜日

2種類のBA283?

うちではNeveの心臓部として取り扱うことの多いNeve BA283ですが、実は厳密には2つのバージョンがあるのをご存知でしょうか。

最近お問い合わせの多いBA283…?

例えばこれ……基板の右側はブランクになっていますね。一見ただの未実装の基板ですが左側にはモトローラのパワートランジスタ2N3055をはじめ部品がしっかり実装されています。

そもそもBA283はプリアンプと出力アンプが2回路含まれているものです。その半分だけ実装されているということは……そう、これは出力アンプのみが実装されたBA283なんです。型番はBA283AMといいます。

このAMという型番はソケットの端子番号に由来します。BA283の一番最初の端子はAから始まり、終わりがVなのです。AからMまで実装済みのタイプなのでBA283AM。つまり全ての部品がフル実装されているものはBA283AVとなります。

AMのバージョンはいわゆるトランス出力を追加する部分に使われていたようです。もちろんこのブランク部分に部品を実装していけばそのままAVバージョンと同じものになります。(AMバージョンでもゲインは18db程度あるので、ちょっとしたプリアンプを作ることはできますけどね)

うちではFDNV-02をはじめBA283を使った製品も製作しております。是非!

2017年3月22日水曜日

Sapphire OnBoardの組み込み

Adamovic Supernova 5st

あっという間に3月ですが、早速先日製造開始しましたSapphire OnBoardの導入&楽器へのインストールの依頼があったのでそのレポートです。

今回は主にヨーロッパ製の楽器の輸入業務をしているover the fieldの越野様からご依頼いただきました。

楽器はオランダ製のAdamovicというメーカーの5弦ベースです。元々はヨーロッパ製の3バンドEQ付きプリアンプが入っていたとのことですが、現在はそのプリアンプが壊れたのでパッシブ状態で使っているようでした。

ご依頼は
・楽器にSapphire OnBoardをインストール
・ボリュームやスイッチ、出力ジャックなどのアッセンブリーを全て新品に入れ替え
の2点です。

ウチはリペア・ショップではないので本来後者の作業はやらないようなことですが、エレクトロニクスのみリフレッシュということで、組み込みと一緒に作業することとなりました。

まず壊れたプリアンプ周りの部品を一度全て外し、電気系の構成を確認します。
ピックアップはいわゆる銘木系ベースによくあるデュアルコイル*2で、それを更に3点トグルスイッチでシリーズ、パラレル、シングルと出力が切り替え可能なコントロールになっています。その後に250kΩのバランサーを通り、500kΩのマスターボリュームへ…という構成ですね。更にアクティブ・パッシブのバイパススイッチも付けます。

今回はスイッチなども含めた全ての部品を新品に交換しますので、ピックアップ以外はほぼすべて入れ替えということになります。SapphireOnBoardは2バンドEQですのでツマミがひとつ余りますが、そこは元々のプリアンプ用のポットをダミーとして残しました。

早速Sapphireをインストールし、セットアップし直します。作業は半日かからず完了です!


がしかし、一度over the field様に楽器をお返ししてインプレッションして頂くと「出力がちょっと大きいから、パッシブ・アクティブ切替時に音量差が出ないように調整して欲しい…」とのご要望が。どうやらあちらのアンプ・システムだとプリアンプのヘッドルームが狭く大きな出力だとすぐに歪んでしまう模様……なので再度お預かり、出力を絞る調整をしました。

内部ゲインを大きく下げても良かったのですが、そうなるとこちらで決めたゲインに固定になってしまうので、大出力から絞り気味のセッティングまで自由度を持たせるべく、最終出力部分に可変抵抗で出力をトリムできるようにしました。
これならば、プレイヤーの環境にあわせて本人の好みのセッティングに追い込むことができます。

そして再調整の後に、再度音色も確認しながらインプレッション…。同時にオリジナルのSapphireもデモ機とお貸ししたのでその比較も交えながらご意見を頂きました。

越野さんにはEQでBassをブーストしたときの質感を特に評価して頂きました。こちらはアウトボードと同じくブーストしていくとブーミーになるのではなく、やや丸みを帯びながらローエンドが増えていくSapphire独自のトーンですね。

ご紹介頂いたエントリはこちらで見ることができます。

今回はAdamovicというエレクトリック・ベースながら木材の特性やアコースティック部分のトーンも大事にしているような楽器ですから、パッシブ的な鳴りを残しつつも(EQフラット時は殆どが差がないので)ベースに必要なローエンドを足してあげる……という意味ならベストなチョイスだったのではと思いました。

施工を行ったのはSupernovaというモデルだったのですが、先述の通りハイエンドベースで定番のデュアルコイル+セットネックというスペックながら、多層ラミネートネック特有の音のコンプレッション感などが少なく、むしろオープンな鳴りを感じるアコースティックな楽器という印象でした。なのでそういった楽器とも相性がいいのかなと。(Adamovic Bassに関しましてはover the field様のHPをご覧になってくださいね)

そして今回を機にover the field様でSapphireプリアンプの取り扱いが開始されました。
デモ機も1台お貸ししているので、関西方面の方は是非チェックしてください。

SapphireOnboardの組み込みは本体+¥5,400〜で承ります。
(その他楽器に装着可能な20kBポットなど部品代が必要になります)

2017年3月20日月曜日

ちょっと危ないノックダウン

オールドNeveを買った知り合いからの相談「古い機材だとしてもちょっとノイズが多い気がする…」ということで早速うちに運んでもらったのですが、中身を拝見するとすぐに問題部分に気づきました。

今回持ち込まれたのはNeve 33122aというオールドの中では後期型にあたるモジュール。元々はBBCがNeveに特注で作らせたコンソールのチャンネル・ストリップ部分です。構造的にはまだオールディスクリートで33115に近いですが、トランスがSt.Ives ではなくBelclereトランスです。更に、モジュールが細身のためにアウトプットトランスが省略され、出力はアンバランスになっています。これは卓の筐体側に大型のトランスを付けて対応していたためなんですネ。(ちなみに前述の33115も細身のモジュールは、アウトプットトランスが基板付けの平たいタイプのため、内部に収まっています)

この33122a、国内の某オーディオ会社によってノックダウンされたものだったのですが、その筐体の構造に問題がありました。

色々まずいです

さきほど説明したように、この33122aは本体だけですとアンバランス出力ですからこれをトランスバランスにするためにはモジュールの外に別途アウトプットトランスを付ける必要があります。このNeveの場合はT1801というトランスが外付けされていました。

なんですが、アウトトランスが取り付けていた位置がなんと電源トランスの真横!
この状態では説明するまでもなくトランスの磁束ノイズを盛大に拾います。しかも、モジュールの後方からトランスまでを繋いでいる信号ラインもシールド線でも何でもないただの撚り線を束ねただけのもの…。出力側はバランス出力だといえども、ACが通っているトランスの真上をそのまま通過して出力コネクタまで引っ張られているような状態。これではノイズだらけになる訳です。

オーディオを自作される人なら分かると思うのですが電源トランスの磁束ノイズというのは非常に厄介でして、いわゆるシャーという高周波ノイズと違ってGNDを這わせたりシールドで囲ったりしても簡単に回避できるものではありません。物理的に距離を離すしか効果的な対処法がないのです。

しかし既に筐体の構造上、出力トランスの位置をズラすといっても2cm離せるかどうかといったところ。ケース内の別の場所に移動させようともスペースの余裕もなく…。結果的に配線をなるべく電源トランスから離すように迂回させ、しっかりシールドさせることでノイズ対策を試みました。

少々不格好ですがノイズは減りました

このようになりました。
こちらの画像だと電源トランスの位置がよく分かると思います。これでもちょっとシビアです。

依頼主に確認したところ、ブーンという低周波のノイズも明らかに減ってs/nも良くなったそうです。やっぱり信号を電源トランスの真上をシールドなしで這わせていたことによるノイズが多かったんでしょうね。電源トランスやAC周りと信号が通るラインは必ず距離を起きましょう。万が一にショートしたときも危ないですからね。

世の中にはこういう危なっかしいノックダウンもありますので、買う前によく確認しましょう…。