2020年2月5日水曜日

Walter Woods製のアンプについて



Walter Woods製のアンプを修理依頼でチェックしました。

今となってはOEMによる低価格D級モジュールが普及したことにより、低価格で大出力のアンプが台頭。今は陰りを感じるようになりましたが、80〜00年代までは軽量&大出力のアンプの代表格といえるアンプでした。

当時としては大胆にスイッチング電源を採用することで軽量化できたのです。





スイッチング電源は今や世の中の大半の電源として採用されていますが、1980年頃までは重量のあるトランスと整流器を使ったリニアレギュレータ方式が大半でした。70年代にはすでに実用的なスイッチング回路が開発はされていたものの、音響用の電源としては精度や耐久度の問題で積極的に採用されることはありませんでした。(Mark Levinsonが初期のアンプでスイッチングを採用したのもそういった黎明期のことです)

現在はスイッチング電源というと、基板やモジュール方式で既存のメーカーのものを搭載するのが主流ですが、WWのアンプはWalter Woods氏がほぼハンドメイドで製作していたということもあり、スイッチング電源部分も自作されていました。

またM100〜200といった初期のアンプは現行で流通しているモデルと違って、プリアンプ部分、パワーアンプ部分もすべてディスクリートで製作されるという、非常に手の凝ったものでした。




奥に並ぶモトローラ製のメタルカンTrが出力トランジスタ。
コンプリメンタリーではなく、準コンプリメンタリーのSEPPになっているのが特徴です。




奥右側がスイッチング電源部分。
右側奥の金属ケースが長らく謎だったんですが、EMIフィルタでした。
円盤型のケースに入っているのがスイッチング用のトランス。出力は+-45Vです。




プリアンプもメタルカンFETとTrの組み合わせによるディスクリート!
ボリュームが生え出しになっているのは修理歴だと思います。


中期以降の大出力モデルはプリアンプはICオペアンプ、パワーアンプもスイッチング(D級)方式に変更され、アンプとしては全くの別物となっています。以前、ジャズベースプレイヤーである納浩一さんが「最近買った方のWWは全然ダメ。音が昔アメリカで買ったやつと違うから…」と仰っていましたが、そういった印象はこういったアンプの構造変化に起因するものだと思われます。

そんなWalter Woods製の最初期アンプ、名機であることは変わらないのですが、前述の通り、電源が自作のスイッチング電源になっていますので、この部分が故障すると非常に厄介です。古いものですので経年劣化はまず避けられないのですが、ユニークなパーツが多く、またWalter Woods氏本人がすでにリタイアしており資料が少ないことを考えるとより修理や保守といった部分は困難になっていくことでしょう。

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