2018年11月24日土曜日

JC-2のモジュールについて

Mark Levinson JC-2について前回のエントリの続きです。
どちらかというと解析編になりますので、技術的な話になります。

改めて各モジュールについてです。構成は、

・ラインドライバーモジュール *2
・フォノアンプモジュール *2
・DCフィルターモジュール*1

です。
モジュールの外見や型番は時期によって多少違いますが私が分かる範囲で個別に解説します。




JC-2 Line Driver Module


まずラインドライバーモジュールです。これはアンプの心臓部です。フォノ含めてすべての信号は必ずこのモジュールを通過します。クラスAで動作するJ-FET入力のオペアンプです。

電源は、+-15Vで動作します。後述のDCフィルターモジュールがなくてもこのモジュールに電源は供給されるので、フォノを使わない場合はこのモジュールさえあればラインアンプとして動作します。DCフィルターモジュールが故障してしまった場合は本体から外してしまってもラインアンプとしては動くということです。

中身は今ではほとんど見なくなったデュアルNchとPchのJ-FETを上下対象に繋げた差動アンプになっています。これは初段上下のFETが互いにバイアスを掛けるという仕組みになっていて定電流回路が不要になるという回路です。日本だと窪田式アンプとして知られた回路ですが、特性の揃ったPchのJ-FETが現在は入手不可能に近いため採用されることはほぼなくなりました。2段目はFETを使ったプッシュプル出力に直結になっています。

アイドリング電流は40〜50mAと多めに流されており、出力段が完全なクラスA級の領域でドライブしていることがわかります。オールFETのラインドライバーで信号をシンプルにアウトプットした音がJC-2の音といっても過言ではなさそうです。(LNP-2のモジュールはアイドリング電流が小さい)

当方の互換モジュールはFLD-01です。


JC-2 Phono Preamp Module


次はフォノアンプモジュール
これはフォノ入力のEQゲイン用に使われるフォノステージ専用モジュールです。

中身はラインドライバー同じくJ-FETのディスクリートアンプですが、ラインドライバーモジュールと違って作動入力が2段になっていたり、半導体の数が多くより複雑なオペアンプになっています。フォノ用の高利得を得るための回路です。

電源は+-13Vです。ラインドライバーの電源とは分離されたDCフィルターを通過して約2V低くなった電源で動作します。なのでDCフィルターモジュールが故障してしまうとこのモジュールは動作しなくなるのでフォノ入力は使えなくなります。(裏技はありますがここでは省略)

アイドリングはフォノですがかなり高めに設定されていて80mA前後です。しっかりクラスA動作しているので通電中にモジュールに触れてみるとラインドライバーよりも少し暖かくなっているのが分かるかと思います。

フォノモジュール本体はJC-2で共通の仕様ですが、フォノイコライザーのゲインやインピーダンス仕様を決めるEQカードがすぐ隣に配されており、EQカードはA3〜A6など数種類のモデルがあります。このEQカードは各種モジュールと同じくソケット式になっているので、取り外しが可能です。

当方の互換モジュールはFPA-01です。

JC-2 DC Power Filter Module


最後はDCフィルターモジュールです。DRF-2やDRF-4といったモデルがあります。Mark Levinsonの純正電源から本体に供給されるDCは+-15Vですが、それをレギュレートして+-13Vを生成するディスクリート・レギュレータです。ここでフィルターされた電源はフォノモジュールのみに供給されます。

内部の回路は公開されていませんが、差動アンプを正負の電流レギュレータに応用したような構造になっていると推察できます。

内部の部品の劣化が顕著に出るのかこのモジュールで、製造から40年以上経った現在では壊れている個体が多く、また壊れる予兆が出やすいものです。壊れ方は共通して、裏や側面に膨らむような状態でヒビが入り、正しい電圧が出なくなります。

このモジュールが壊れるとフォノが聴けなくなるのはもちろんですが、同時にピーキーな電圧が掛かってフォノモジュールも壊れることがありますので要注意です。

実は個人的に所有していたJC-2のDCフィルターもここが最初に壊れました。ラインドライバーなどと違って互換品はほぼ流通していないものですので、個人的にローコストで音質の良いものを製作しました。(後ほど別のエントリで紹介します)


JC-2は通じてモジュールの構成は同じですが、最初期、初期、中期、後期(ML-1)でモジュールの外見やモデルが違います。中期ぐらいまではモジュールに紙のシールが貼られ、アイドリングやDCオフセットの値が手書きで書かれていますが、後期になるとシリアルのみのビニールシールに変更されています。

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