2018年11月18日日曜日

Mark Levinson JC-2について


Mark Levinsonというブランドはオーディオ界で既にご周知の通りですが、中でも最初期の製品にあたるJC-2というプリアンプはヴィンテージ・プリアンプとしていまだに根強い人気を持っています。

最初期この名機をデザインしたのがジョン・カールというデザイナーです。(JC-2のJCはJohn Curlに由来します)ジョン・カールがマークレビンソン時代に携わったアンプはJC-1(MCヘッドアンプ)、JC-2(プリアンプ)、LNP-2(プリアンプ)とごく僅かなモデルに留まりましたが、そのサウンドは高く評価されています。(会社としてはその後デザイナーを変え、様々なアンプを発表。紆余曲折を経て存続していきます)

JC-2(ML-1)は既に回路図も公開されていますので、その全貌は明らかになっています。

中身は非常にシンプルな回路です。特にフォノ入力以外はそのままクラスAの出力アンプ(ラインドライバー)を一度通るだけという潔さ!プリアンプ史上最もシンプルに徹したプリアンプとも言えると思います。


JC-2内部

そして特徴的なのが各アンプセクションはモジュール化されており、取替可能になっていいることです。これは故障時の対応や後のアップデートに対応するためと思われます。モジュールはフォノ用のEQアンプモジュールラインドライバーがLRで各2基ずつ、アンプではないですがフォノ用の電源レギュレータのモジュールが1基搭載されています。もちろんすべてディスクリートです。

またアンプモジュールはすべてJ-FET入力になっています。JC-2の発表は1974年頃。FET入力の本格的な差動アンプを採用されたのは初めてではないでしょうか。(プロオーディオでも有名なAPIやQEのアンプは全てバイポーラ入力です)ジョン・カールも早い段階でFETの優れた雑音特性に目をつけていたのだと思います。

しかしこのアンプモジュール、モールドされているクラスAアンプの宿命もあるのか経年によっていずれ壊れます。40年以上前の製品ですからね。もちろん壊れてしまうと修理をしなくてはいけない訳ですが、モジュール本体は新品ではもう手に入りません。そうなるとオリジナルのモジュールを分解して修理するか、新しく互換性のある代用モジュールを手に入れる必要性があります。

前者(モジュールの修復)に関しては国内外のショップで行うことができるようですが非常にコストが高く、分解しても直らないリスクもあるのでよほどオリジナルのモジュールにこだわりがない限りはオーナーの選択肢には入ってきません。となると互換モジュールを購入するのが有力な選択肢になってくる訳ですが、これもまたオリジナルの音とは異なるうえにモジュール自体もそこそこ良い値段になってしまいます。

ちなみに、オリジナルのラインドライバーやアンプモジュールを模した偽物モジュール(中身はICオペアンプ)も大量に出回っていますので、レビンソンのシールが貼られているからといって海外から入手するのはなかなか危険です。


そういった状況を踏まえて「いっそのこと、うちで交換用モジュールを製作できないだろうか…」と思ったのが数ヶ月前。ちょうどうちではFDOA-01というJ-FETのディスクリートオペアンプを開発したところでしたし、これならばオリジナルに近いサウンドを現代の高品位な部品で再現できるのではと思いました。

ひとまずはメインアンプ部分となるラインドライバーの開発です。
数ヶ月の間に数パターンの試作が出来上がり…。

(つづく)

2018年9月14日金曜日

Neveのアウトプットトランス その2

前回のエントリから少々時間が空きました。前回のエントリを投稿したあたりからとある物の検証や試聴に時間をかけていたためです。



そのとあるモノとはこちら…。
Humpback EngineeringがプロデュースするLO1166互換トランス、HT1166です!


2018年7月28日土曜日

Neveのアウトプットトランス その1

オールドのNeveといえばアンプカードとトランスがサウンドのキモですが、今回はアウトプットトランスについてです。中でも最も有名なひとつがこのMarinair LO1166です。コンソールの中核部分、また1073や1066のようなモジュールの最終段に使われているものです。

Marinair LO1166 Matched Pair


近年は神格化されすぎたせいか海外でも高騰&入手困難で、今となってはこういった綺麗なペアーを確保することは難しくなってきています。(売り物のストックはもうとっくの昔にありません)


2018年7月14日土曜日

窪田式FET電源

FETアンプで著名な窪田登司先生が80年代に発表していた定電圧回路です。この手の回路は通常電力増幅用Trをダーリントン接続+誤差増幅器で構成されますが、入力インピーダンスが高いという点に着目してMOSFETが採用されています。いわゆる高速レギュレータの一種です。簡易的に、窪田式FET電源と呼ぶことにします。基本回路図は以下の通りです。

窪田式FET電源

Q14のベース電位を決めるのにツェナーダイオードが使われています。並列で繋がれている電解コンデンサはツェナーダイオードから発生するノイズを吸収するためということですが、この定電圧素子をLEDでやってみたら面白いのではないかと思いました。LEDならば素子から出るノイズは圧倒的に少ないですしこのコンデンサも省略することができます。ベース電位を約6Vほどにしたいので、Vfが約2Vの赤色LEDを3本、もしくは2.8Vの青色LEDを2本といった具合でしょうか。これを応用してプリアンプ用の電源を作ってみたいと思います。

2SK214/2SJ77は流石に古すぎて入手難ですのでMOSFETは手持ちにストックがある2SK2013/2SJ303を使ってみることにします。PCBは既に発注をかけているので到着待ちです。

窪田式FETアンプに関してはまた別のエントリにて。

2018年6月28日木曜日

Neve BA208 AmpCard

BA208

ストックパーツの類を整理していたら、Neve BA208が沢山出てきました。

これもオールドNeveのアンプカードの一種で、コンソール内のスイッチングユニットNeve1948のバッファー的に使われていたアンプです。比較的用途が近いのはBA283AMでしょうか。しかし、BA283とは回路が少し異なります。回路図を見てみましょう。


2018年6月15日金曜日

オリジナルのディスクリートオペアンプ

FDOA-01


Floatiaオリジナルのディスクリートオペアンプ、FDOA-01FDOA-02を発表します。
共にAPI2520と互換性のあるディスクリートオペアンプ(DOA)になります。

オリジナルのDOAのアイデアは2年近く前からありましたが、少なくともオリジナルの2520や、既存のDOAに対して何らかのアドバンテージがあるものでなければならないという考えがあり、十分なクオリティーのものになるまでは時間が掛かりました。それがやっと形になったのでこの度発表となりました。

まずFDOA-01ですが、こちらはJ-FET入力タイプのDOAになります。ローノイズかつFET特有の切れのあるクリアーで繊細なサウンドが特徴です。音の立ち上がりの早さ、明瞭さは他のDOAよりも格段に優れています。

FETは入力インピーダンスが高くセンシティブな信号の増幅に向いていますが、十分な増幅率を確保することや、また半導体の特性選別が難しいという問題がありました。FDOA-01では初段の差動増幅回路に低雑音・高増幅率のデュアルマッチド・FETを採用することでこれを解決。個体差がなくフォノイコライザー・マイクプリアンプにも十分足りる内部ゲインを持っています。

FDOA-02


FDOA-02は01と基本はほぼ同じ回路ですが、こちらはバイポーラTr入力です。初段はデュアルのバイポーラTrを採用しています。全体的に落ち着きがあり、中低域が充実した音色になっています。バイポーラ入力ですので、既存のAPI2520搭載機材との相性もよく、特性的な互換もあります。




またどちらも定電流回路とバイアス回路にLEDを採用しています。一般的にこれらの回路にはツェナーダイオードやスイッチングダイオードなどの汎用シリコンダイオードが用いられるのが普通ですが、微弱電流においてはダイオード自身がノイズの発生源になっていました。LEDはそれらに比べて無視できるほどにノイズが小さいというメリットがあります。LEDなので通電時には当然発光しますが、電力を無駄遣いしている訳ではないです笑

この2つは単品で支給もしますが、(※)これらを使って新型のマイクプリアンプとフォノイコライザーも製作いたします。既に試作は何度かしており、とても高評価を得ています。またプロオーディオだけではなく民生用のアンプにも転用できますので色々な応用を考えています。

今後はこういったディスクリートのモジュール製作が中心になっていくと思います。続報をお待ち下さい。

※各ページに記しました通り通常はペアーで¥12,000で販売します。

2018年5月28日月曜日

基板頒布の一覧



頒布中のDIY向け基板一覧です。原則PCBのみになります。
DOAやキットの購入はwebshopで。
(回路図とマニュアルはすべての基板に付属します)

クリックポストでの発送が基本です。
厚みのある部品や総重量が多い場合は場合はゆうパック/レターパックになります。

【注意】
PCBは飽くまでも販売ではなく頒布という形式をとっています。個人での使用を目的としたものであり、商用利用は想定しておりません。また、各基板の仕様についての質問は受けますが、製作・実装の初歩的なテクニカル・サポートはしかねますので、基本的な工作技術があり、測定器・テスターなどを用いて自身で動作確認ができる方のみ購入してください。