2016年7月26日火曜日

2N3055 PowerTransistor


メタルキャンパワートランジスタの代表格である2N3055です。
モトローラをはじめRCA、東芝製などもあり、主に電流増幅用に以前はよく使われました。メタルキャンという名の通り金属ケースに入ったTO-3という非常に古いパッケージです。最近はパワーアンプも電源もMOS-FETが主流になりつつあるのか、あまり使われないようですね。

モトローラの半導体部門が撤退したこともあり、一時期は新品が手に入らなかったのですが、後続のオン・セミコンダクター製やSTマイクロ製がセカンドソースとして製造しており、今では秋葉原でも安く手に入るようです。コンプリメンタリのMJ2955もオリジナルは入手困難な品種ですがこちらもセカンドソースは安価で入手できるようになりました。

ちなみに写真右側はアルミ蓋パッケージの3055で、初期のタイプです。
現行品の3055はキャンの材質が変わり、厚みもやや増しています。

NeveのBA283の最終段でもこのトランジスタが使われていますが、終段にこれを使うと独自の力強さというか音のパワー感があり、個人的にお気に入りのトランジスタのひとつです。

Mark Levinson用の電源基板も2N3055/2955のペアを出力用に採用しています。非常にサウンドキャラクターの濃いトランジスタです。

2016年5月29日日曜日

API 2520 Opamp

API 2520 OPAMP

知らぬ人は居ない?API2520オペアンプです。
所謂ディスクリートオペアンプ(DOA)の先駆者的存在になったもので、現在もAPI社で作られている殆どの機材に用いられているものです。

前時代のSiemensやNeveのようなシングル増幅アンプとは違い、完全な差動アンプとしてオペアンプになったことにより簡単に利得を調整したり、外付けデバイスの組み合わせでプリアンプやEQ、コンプなどのモジュールにそのまま応用可能になったことが大きな進化です。またオペアンプとして共通規格のモジュール化することで容易に交換や補修が可能になったということです。同じ規格では、Jensen製のDOA、JH990などもこのあとに続いて発表されています。

70年代製といっても既にアナログにおける設計はほぼ極めているもので、サウンド的にもオペアンプ単体で見て特性・音色のバランスが良く、プロオーディオだけではなくコンシューマ用のリスニング・アンプにも使うことができます。

オリジナル(ヴィンテージ)と現行型で内部の抵抗値や半導体などが一部変更になっているものの、構造は一貫してほぼ同じです。2520の基本形は正負の入力、出力、正負電源の6ピンです。ヴィンテージの2520は7番目にT (Trim)のピンがあり、これは外部に可変抵抗を取り付け、初段のコレクタ抵抗値でDCオフセットを調整するものです。現行のオペアンプはこのピンは省略されている6ピン場合が多いです。

回路はNPNトランジスタの差動入力段、同じく差動のエミッタ接地増幅が2段、コンプリメンタリドライブ段、出力段というディスクリートアンプの基本となるような設計で、定電流回路は抵抗で省略されています。また位相補償は細かく大きめの値で入っており、なるべく特性をフラットにしようという意図が読み取れます。そのせいもあってか高域はナチュラルな印象です。

出力にはメタルカンTrによるエミッタフォロワーが入っており、十分トランスをドライブする力を持っています。

電源電圧はモデル25“20”の文字通り±20Vまでで駆動できます。
API系のクローン…もとい、ディスクリートオペアンプを使う機材では標準の電源が±15〜18Vぐらいで共通して使われることが多いので、20Vギリギリで使うことは少ないですが、十分なヘッドルームの広さを持っています。シングル半導体アンプのNeveなどが+24Vでヘッドルームが狭かったという部分からの進化です。

ちなみにこのオペアンプ、生産時期によってバージョンが確認されているだけでも7種類以上はあります。ラベルが青白のもの(SPRING FIELD VA)や画像の黒銀ラベルのもので4種類のロットがあるようです。自分がよく見るのはMELVILLE N.Yと印字されているものですね。

現行品があるパーツなので、以前は比較的安価に入手できたのですがこの頃オリジナルを手に入れようと思ってもなかなか数が揃わず、値段もだいぶ上がってしまいました。海外だとクローン基板が多く出回っているので、石は自分で選別して自作してみるのもいいでしょう。


FDOA-01


当方でも高性能なAPI2520互換オペアンプ、FDOA-01FDOA-02を製作しています。2520オペアンプの代用としても使えますし、オリジナルの機材製作にも応用が効きます。

また2520オペアンプを扱うことのできるプリアンプ基板(PB2520)も当方で供給していますので、オペアンプ単体を入手して使い道に困っていた方も様々なアプリケーションに転用できます。


2016年4月14日木曜日

BA440とBA640

左BA440,右BA640
忙しすぎて久々の更新になってしまいました。

最近立て続けに??オールドNeveのノックダウンやラック化の依頼が続き、パワーサプライだけではなくNeve本体の修理や調整をしたりするのですがその一端の作業です。

こちらのBA440とBA640というのはNeveの出力アンプカードの一種です。
出力段ということでトランスのような負荷がぶら下がるので、当然電流増幅段が必要になってきます。見て分かる通り、出力段にはメタルカンTrのSEPPとなっています。ここがかなり発熱するので大きめの放熱器が付いています。

BA440とBA640は互換性があり、入れ替えたりすることも可能です。
この2つのアンプカードの違いですが、440のほうが先駆でフルディスクリート仕様です。構造自体はNeve特有のNPNトランジスタによるシングル増幅段+プッシュプル出力という古典的なものです。
それに対し、後期に作られた640は入力&増幅部分がIC、出力段はSEPPというハイブリッド仕様になっています。

この2つの違いというのはいわゆる良し悪しというものではなく、音色の違いという風に私は捉えています。フルディスクリートの440はオールドらしい中低域に色気があるのに対し、ハイブリッドの640は全体域に対してバランスが良くスピード感があるという印象です。

Neveのアンプカードというと以前紹介した283などもありますが、あちらが基板用ソケット接続に対し、こちらはオペアンプタイプのピン接続なので、このアンプだけ使って別の機材に作り変えることも可能です。出力トランスを付けるためのドライブアンプにしたりと…なかなか面白いですよ。

2016年2月2日火曜日

QuadEight Coronado ラッキング

これはまだ手を加えていない状態です

近日中に製作する機材の紹介でもしようと思います。
まずはQuadEIght Coronadoコンソールのノックダウンです。
コンソールの各chからHA+EQを抜き出し、2chぶんを3Uラックにラッキング予定です。
こちらはDaveGroupよりQuadEightのユニットを分けて頂いたことで製作可能となりました。
(完成品の画像等はコチラを参考にしてください)

QuadEightは過去に何度か書いたように、±28Vで駆動するディスクリートオペアンプ、AM-10の力強いサウンドが魅力です。入力にJensen製のマイクトランスが付き、更に3バンドEQも付きますから、今となっては非常に豪華な文句の付けようのない仕様です。それが2ch仕様ですから、様々な使い方ができると思います。

ユニットは今回限りの在庫なのでうちで製作するのは最初で最後になると思います。
いまディスクリートのチャンネルストリップを2chも世間で買ったら30万円以上はすると思いますし、非常にお買い得だと思います。

もちろん当方で販売するヴィンテージユニットは、電解コンデンサーやコネクタなど消耗部分は全て新品に交換してから販売しますので、コンディションも良いです。

興味がある方はお早めにお問い合わせください!

2016年1月19日火曜日

ディスクリートは音が良いのか?

Neve BA283

さてさてこの頃うちのような所以外でも、主にプロオーディオ界隈では“ディスクリート”という言葉をよく耳にするようになりましたね。ディスクリートだとかクラスAでナントカとか、街の機材屋さんでも頻繁に謳い文句に使われています。
本日のエントリはディスクリートは音が良いのか?ということに関する諸々です。


2015年8月14日金曜日

Quad Eight MP404 ラッキング


非常に珍しいQuad EIghtのマイクアンプモジュールMP404を入手できたのでラッキングしました。
昨年からそのうちやろうとは思っていたのですが、なかなか時間が確保できなかったのとパネルの加工に手間取っていたこともありだいぶ先送りになっていました…。
仕事の作業などの合間に私物として作っていたので製作期間は3週間ほどでした。

2015年8月11日火曜日

Neve BA283 AmpCard



リキャップ中のNeve BA283アンプカードです。
オールドのNeveサウンドの要となっているもののひとつで、Neve1073、1066、1272などポピュラーなNeveの心臓部はこのアンプカードが使われていました。

BA283上にはプリアンプとアウトプットアンプの2つが実装されており、これ1枚でディスクリートのアンプが作れるような構成になっているのが特徴です。




全段がNPNトランジスタによるA級シングルアンプ構成で、増幅素子には小信号用トランジスタBC184、アウトプットの最終段にはTO-3パッケージのパワートランジスタ・モトローラ製2N3055が入っています。これにより、負荷の重い大きなトランスも十分にドライブ可能となっています。(放熱のアルミ板ごとかなり熱くなります)出力段がトランスを介して直流を流すようになっているのも特徴で、大型の出力トランスLO1166のためにある出力アンプといってもいいかもしれません。

ゲインはそれぞれ20dbぐらい取ることができるので、これにマイク用トランスを足せばトータルで+60db程度のゲインを稼ぐことができ、マイクプリアンプとして使うことができます。このBA283に入力トランスと出力トランスを付けたのがまさにNeve1272です。Neve1073のイコライザー抜きバージョンとも一見言えそうですが、1073の場合は更に補助用のNeve284というアンプカードも併用して増幅しています。1073のプリアンプを再現するには増幅率などを調整する必要があります。

またBA283もいくつかバリーエーションがあります。

BA283AV : すべての部品を実装したフルバージョン
BA283NV : プリアンプ側のみ実装したバージョン
BA283AM : アウトプットアンプ側のみ実装したバージョン

このアンプカードは前述の通り、大きいトランスをドライブできるだけの力があるので、Marinair LO1166のような大型アウトプットトランスと相性が良く、このふたつが揃うと中低域に厚みのある、正にオールドNeveの音になります。代用品のCarnhilのトランスを使う場合はギャップ対応でプレートが1U対応サイズになったVTB1148を使うとよいでしょう。Marinairとはやや傾向が違うものの、オールドに近い音色を得ることができます。

上:BAE BA283クローン 下:オリジナルBA283

回路図などは既に世間に出回っているので、いわゆるNeveのクローンを作っているメーカーもそっくりそのままこの回路を真似てはいるのですが、なぜか同じような音にならないのが不思議です。音質の要としてはヴィンテージのトランスがよく語られますが、オリジナルのBA283にはまず古いパッケージのトランジスタ、位相補償にポリスチレンコンデンサを使用、2N3055も初期のアルミパッケージを採用しています。このように、今では入手できない素子が多く使われていることも要因のひとつになっている気がします。

BA283は補修用も含めてまだ当方でもストックがありますが、数年後にはトランスと同様もうなかなか手に入らないものになっている可能性が高い気がしています。

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気軽にNeveクローンが作れるようにBA283のクローン基板を作りました。
>> BA283Pと名付けました。単品でも販売しています。